2010726 ランダム
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第12話 母との邂逅

第12話 母との邂逅

使徒の腕を蹴り返した反動でエントリープラグ内に落ち込んだシンジは、とっさにレイを庇うように腕の中に抱きかかえた。
衝突のショックに身構えた瞬間、シンジはレイと共に、プラグ内に溜まっている液体の中に落ちていた。
液体によって衝撃が緩和されてほっとしたシンジの頭に、強烈に干渉してくるモノがあった。
そのあまりの意志の強さにシンジの意識は薄れていった。

ふと目が覚めるとそこは懐かしい感じのする古い家。
何気なく目に入った自分の身体を見て流石のシンジも驚いた。

「小さくなってる・・・。」

こんな小さな頃、まだ辛い目に会わなかった昔。
そう、その頃住んでいた家がここだった。
そして、あの頃は優しいお母さんが・・・・。
急に現れた気配に驚き、飛びのきかけたシンジに優しく微笑み掛けるこの笑顔の女性は!

「母さん!!!」

それは、シンジが求めてやまない優しい母の姿だった。

新世紀エヴァンゲリオン(8)

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「母さん!母さん!!母さん!!!!!!」

泣きながら抱きつき、母の手にくるまれて・・・・・・・・・眠りに落ちようとする意識を辛うじて持ちこたえて、もう一度母の顔を見上げた。

「母さん・・・」

ただ静かに微笑んでいる。
あの頃と変わらない微笑み。
でも、これは本当じゃない。
本当の母さんは・・・・・、

「死んだんだ・・・」

つぶやき、その自分の言葉に涙が溢れてくる。
そんなシンジを優しく微笑みながら包み込み、母の輪郭は段々とぼやけて・・・・・、消えていった。
この場所に残され、今消えていった母の想いがシンジの中に沁み込んでくる。
純粋に子を想う母の気持ち。
そして、科学者としての母の願い。
シンジの手の中には、消えずに残った母の心が光の玉となって輝いていた。

続く


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